東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科

☆医療情報と比江島ゼミ

医療情報について

 近年,IT(情報技術)の発達とともに,膨大な情報が生産され,その伝搬速度も極めて速くなってきています。そうしたなか,氾濫する情報からいかにして役立つ情報を抽出するかは重要な問題となっており,抽出された有益情報は「インテリジェンス」や「エビデンス」といった言葉で表現され,それらの呼称は広く流布しています。

 医療分野においても例外ではなく,取り扱う情報が人の命に関わることから,情報の正確性,安全性(機密性),俊敏性などが,他分野と比較してより高度に要求される現状にあります。それ故,その状況に対応できる人材の育成は急務とされています。

医療情報と統計学・疫学

 医療情報における情報の正確性に対する高度な要求に応えるために,統計学・疫学の知識は重要視されています。

 医師が患者に対して治療方針を決定する場面においては,正確な情報(エビデンス)にその判断は基づくべきであるという考え方,「Evidence Based Medicine (EBM)」が流布しています。主だったエビデンスは適切な臨床試験の結果からもたらされると考えられ,臨床試験の計画や得られたデータの適切な分析には,統計学・疫学の知識は必要不可欠とされています。もちろん,エビデンスの利用においては最低限の統計学・疫学の知識が必要になることは言うまでもありません。

 このことは治療方針を決定する場面に限った話ではなく,医療従事者が患者のために意志決定を行う多くの場面において議論されており,「Evidence Based Nursing」,「Evidence Based Nutrition」,「Evidence Based Health Care」といった言葉が広く用いられています。前述の通り,EB○○の実行には最低限の統計学・疫学の知識が必要になり,ほとんどの医療関連学部・学科において統計学・疫学の講義が開講されています。

エビデンスの生成

 エビデンスの生成は臨床研究や疫学的研究によってなされます。これらの研究を適切にデザイン(計画)し,収集されたデータを正しく分析してエビデンスを生成するには,より高度な統計学・疫学の知識が必要となります。当ゼミの学生が活躍できる場の1つにこの分野があげられます。

 製薬メーカーにおける新薬開発や,医師の新しい治療法の開発においては,臨床現場での介入研究(人を対象にした実験的な研究)でエビデンスの生成を行います。近年,こうした研究の一部は大規模に実施されるようになったり,国際的に実施されるようになってきています。これらの運営を支え,収集されるデータの管理・運用を安全かつ迅速に行うためのシステム開発もまた重要な分野であり,当ゼミの学生だけでなく本学医療情報学科の学生の活躍が期待されます。

 また,近年,様々な医療関連情報(健康診断情報やレセプト情報など)がデジタルデータとして保存され,巨大データベースの構築が可能な現状にあります(一部は構築されている)。こうしたデータベースを有効に活用できるようデザインしたり,データに疫学的にアプローチして新たなエビデンスを得たりすることはとても重要なことです。前者では本学医療情報学科の学生が,後者では当ゼミの学生が活躍すると思われます。

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