東京医療保健大学 海外研修レポート

St.Joseph Medical Center
—HIMによるカルテの電子化とコーディング時における質の維持

楠田 佳緒

コーディングを正確にするために、HIM(診療情報管理士)コーディネータという役割が置かれ、正確なカルテが出来上がったうえで、コーダによるコーディングが行われていた。

まず、紙媒体の退院サマリなどのカルテを電子媒体でスキャンし保存する。スキャンした際に見にくい場所がないか、画像がきれいにスキャンされているかなどをチェックし、 カルテの質を維持している。

カルテのスキャンの様子
右)カルテをスキャンする人  左)カルテの質をチェックする人

HIMコーディネータは、カルテを見て医師の記録が足りなかったときに、電話を使って医師に確認している。こうすることで、コーダに情報がいく前に訂正できるので、 スムーズなコーディングにつながる。また、医師の支援にもつながる。HIMコーディネータはコーディングはせずに、医師とのやりとりでコーディングの質を高める支援をする。

患者のカルテはそれぞれのコーダに割り振られ、入院・救急外来・外来など専門のコーダがそれぞれの患者にコードを付ける。入院患者が多い時は他の人にも割り振られるので、 コーダはすべてにおいてコーディングできるようにしていなければならない。

エンコーダグルーパを使い、コーディングを行う。リストから患者を選択し、アカウントナンバーを登録すると、カルテが出てくる。

患者のカルテ
患者のカルテ
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疾病名を入力すると第一次索引項とそれ以下のコードが出てくる。そこから正しいコーディングをし、入力する。本を使っていた時よりも約半分の時間でコードを振れ、 クリックするとすぐにコードが出てくるので、時間が短縮され効率が良くなる。
コーディングする時にカルテに疑問を持った場合、医師に質問しデータベースで記録が残るようになっていた。医師に質問がある場合は、そのスペースがあり、 入力するとHIMコーディネータに送られる。HIMコーディネータは医師に確認し、再びデータベースに入力され、コーダに返信される。コーダはこれをもとに正確なコーディングを行うことができる。 また、質問事項や答えがデータとして残るので、データを取る際にも利用できる。
コーディングしているときに専門的な用語や薬について調べたい場合は、コンピュータの中に医学辞書や薬について書かれているものが入っていて、すぐに調べられるようになっている。 それでもわからない場合はインターネットにもアクセスできるので、すぐに調べることができる。
ACISというシステムは、セントジョセフのWebベースの記録システムである。画像は直接登録できないがPACSにつなげることで、画像や動画を見ることができる。ACISとはコーダだけではなく、 看護師や医師がアクセスでき、どんな薬を処方したかを、看護師も医師も書き込めるようになっている。薬の副作用が出た場合、それ専用のデータベースに送られ、薬剤師がそれを確認できるシステムになっている。 すべてのコーディングが終わるとcompleteとなり、次の患者のコーディングへと進めていく。

ACISの画面
ACISの画面
画像の表示
画像の表示

この一連の作業により、コーディングが行われている。HIMコーディネータによる質の維持と、データベースでの情報管理によりスムーズなコーディングが行われていた。

シアトル研修の中でエバーグリーンでのテレフォントリアージに、1番興味を持った。自然な会話の中から必要なことをどんどん聞き出し、 コンピュータに入力していた。提供する情報の標準化や、ナースの支援をするためのシステムは現場に合ったもので、正確に且つスムーズに トリアージするために作られていた。システム自体はオラクルのようなもので作られていて、企業が枠組みを作り、病院の技士がその病院に合ったようにアレンジできるようになっていた。標準化を維持しつつ、その病院に合うように柔軟性のあるシステムを作ることが必要だと感じた。
医療のシステムについて多くのことを学べた2週間だった。日本にいただけで調べることができるが、実際システムを見て直接質問することで、 とても参考になり有意義な研修となった。

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