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人がやるべきことと機械が得意なことに分けて質の高い医療へ

——RFIDタグによる手術器械管理システムの研究についてお聞かせください.

RFIDタグ付きの手術器械
RFIDタグをつけた手術器械
RFID部分の拡大
取り付けたRFIDタグ
山下

日本では,医療過誤で生命が短くなったり,障害を持つ人が年に約2万人存在します.その中でも手術によるリスクは高くなっています. 医療は人手によるところが多いのですが,機械やシステムがやれるところは機械やシステムが,人間がやるべきことは人間がやるというように, 役割分担をしないと安全で満足度の高い医療を提供できないと思います.そこで,手術を安全に行えるような支援が必要だと考え,開発を始めました. 鉗子などの手術器械やガーゼの体内への置き忘れ事故は,大体,手術1万件に1件くらいの割合で起きていると報告されています. 手術器械って1回の手術で150本や200本を使うんです.それを人間が数える必要はないですよね.何かの作業をしながら手術器械が何本あるかを数えていれば, 当然間違えます.またひとつひとつの手術器械は,それぞれが何回使われているか正確には分かっていないのです. だから狂牛病で話題になったクロイツフェルトヤコブ病のような感染のある患者に使った手術器械を別の患者に使ってしまうなどの,二次感染が起きてしまうことも否定できません. そこで、現場の負担を軽減すること,患者の安全性高めるという両方の観点から,手術器械にRFIDタグをつけた管理システムを開発しています. こうすることにより,体内置忘れ事故はほぼゼロになり,どの患者に何を何回使ったのか管理できるので,手術器械が破損して体内に置き忘れることも, かなり減少できると考えられます.また、誰にどれを使ったのかトレーザビリティできるので,もしも二次感染が起こってしまったときに対処しやすくなります. そういった科学的なデータを提供するためにやっています.


——それは,ME機器にも同じなのですか?

山下

考え方は同じですが,システムが全然違います.手術器械で用いているRFIDタグは,パッシブ型というJR東日本のSuicaや電子マネーカードのEdyやイオンのWAONと同じようなものを使っています. パッシブっていうのは電源を持っていませんので,外部のエネルギーを利用して信号を返しています.アクティブ型のRFIDタグというのは,要するに無線機であって, 無線機にいろんなセンサをつけて,さまざまな情報を返すことができます.そうすると,ME機器の例えば心電図や輸液ポンプやパルスオキシメータに加速度センサをつけると 落としたとかぶつけたとかが自動的にわかる仕組みができます.それから電源入れているときにデータが取れるから,機器の本当の稼働率がわかります.そうすると,どこに何があって, どれだけ使われているかもわかるようになります.病院内では経営効率や患者安全のために,適切に機器や医療情報を評価して,適切な治療やケアを提供し, ヒューマンエラーによる事故が起こらないようにデータを取る,そのための支援システムが重要です.

解説

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