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"必要な治療"を"必要な時"に"必要な所"で"正しい手法に基づいて"

——このほかに幅広く研究をされていると思いますが,難病プロジェクトについて教えてください.

難病疾患の患者さんの日常風景
難病疾患の患者さんの日常風景
患者さんの描いた山下准教授の似顔絵
患者さんの描いた山下准教授の似顔絵
山下

難病の研究は厚生労働省のプロジェクトに参加させてもらっています.今現在,日本で難病指定が130疾患ありますが, 130疾患がそれぞれどのくらい医療費を費やしているかというのが分かっていません.だから難病疾患の対象者がどういう生活をして, どのような治療効果が出ているかというのを全然評価されていない状態と考えていいと思います.それは非常に問題です. 本当にその人に必要な支援をしていくべきだし,必要でないことはしないほうがいい.医療に"必要な治療"を"必要な時"に"必要な所"で" 正しい手法に基づいて"行われることが重要だと思います.そのためには情報を分析しないといけないのですが,分析をするにはもの凄く大変で, いろいろな壁があります.これは医療情報を分析するために重要なことなのですが,データの標準化っていうのができてないために集められた情報が比較できなかったり, そもそも入力される時点で考え方が統一されていないために,信頼性がないデータとなることもあります.だからそこから何が見えるかを分析することはとても難しいし, そのデータを分析した結果,ネガティブデータが出た場合,本当に現場でやるべき治療が行えなくなるかもしれない.だから、どういう観点でデータをみるかはとても重要で, そういうことを考えて,このプロジェクトに取り組まなければならないと思っています.


地域の連携と医療の連携

——次に,地域医療プロジェクトについて教えてください.

山下准教授
山下

地域医療で最初に言えることは,慢性疾患を急性期病院で長期的に診る必要がない場合が多いということです. もちろん慢性期疾患の持つ人でも急性期な状況になることはありますので,急性期疾患は急性期病院で見る必要がありますが, それ以外の患者はなるべく家に近いところで診るべきだと私は考えています.つまり,診療所やクリニックなどの1次医療と在宅医療ですね. なるべく家に近いところでやったほうが患者も生活の質を維持できて,楽しく過ごすことができる.楽しく生活できることを支援しながら, 慢性期の維持を行うべきだと考えています.今現在,独居の高齢者はとても多いですが,独居の高齢者を支援するには地域のコミュニティがとても大事です. そういう居場所があると、その中で自分は守られているんだって感じることができる.そうすると,いろんなことがやれるし,バックに医療があるとすごく活動的に生活できて, 前向きに生きられる.きっとさまざまな部分の満足度も高められるし,そのような仕組みを作ることも可能だと思います.だから,そのための仕組みを作って, 医療の連携と地域の連携をして,地域の健康をモニタリングして評価して,ひとつの閉じられた空間にすることが重要でそういう地域医療プロジェクトをやっています.


——地域医療には他職種の連携が非常に重要だと思いますが,本大学の看護学科・医療栄養学科・医療情報学科のチーム医療における連携について教えてください.

山下

看護・医療栄養学科は,現場で働く最前線の人たちです.その人たちに作戦・立案をして,この患者にはこういう支援が有効だというような情報提供できるのが医療情報の役割だと思います. だから医療情報学科の学生には,実際の事例に基づいて参画していく練習をしてほしい.ひとつの訓練が終わったら,今度は地域と一緒にやってほしいんです.アメリカでも行われていましたが, いいものができたらそこで使ってもらうとか,参画する仕組みをつくって自分の居場所を確保する.医療情報の役割って,すごい大事だといろんなところから言われるけど, 本当に活躍できているところって少ないと思います.だから,これからそういう居場所を作っていくっていうのが医療情報の学生の役割だと思っています. そのためのテクニックをそれぞれ磨いてほしいし,他学科でそれぞれ考えていることや,進むべき方向性などをディスカッションしてお互いを理解し合えると進むべき道も見えてくるのではないかと思います.

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