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——この研究を行っていて魅力だなと感じるところはなんですか?

野口

やはり、人のためにやるということです。また、我々先祖が築いた日本の伝統食文化を安心安全な形で維持すること、これが食育です。 先人はフグの肝から毒を抜くことを工夫したが、十分ではなかった。しかし魅力的な食品を開発した。いまや、スリルを味わってフグ肝を食べる時代ではなく、 フグを安心安全に食べていく時代です。それが私たちの責務です。しかしそれだけではなく、フグ肝を栄養や機能性からよりよいものをつくり、 工夫する必要が求められています。先人がやってくれたことをここでやめてしまっては申し訳ありません。

——将来、無毒で栄養価の高い、フグ肝を提供できることができたら、医療栄養学科としてやりたいことは?

野口

医療栄養学科としてフグ肝の機能性に注目します。頭をよくし、心筋梗塞、脳梗塞を治すのではなく予防するフグ肝を作ることが、 我々医療栄養学科の掲げるそのものであります。

——では、将来的には病院食でこの機能性を持ったフグ肝を提供できるようになるのでは?

野口

現在はフグ毒を含む部分を捨てています。しかしもったいない!今の景気を考えてもその二次利用も必要です。 そこから、食品化学、食品業界を発展させる必要があります。また、伝統食品を復活して、先祖からの引継ぎをしたい。 それを安心安全な形で引継いで広め、さらに捨てていたものを、非常に付加価値が高くして利用したい。

——フグの研究をされていますが、大学として掲げるチーム医療に関連して、 医療栄養学科として医療情報学科・看護学科とコラボレーションしていくことについてはどのようにお考えですか?

野口

考えていかなければいけませんね。 医療情報で宣伝を、看護のほうで、倫理規定をお願いしたいと思います。試食会開催に際して万が一の中毒の状況にも備えなければいけません。 開催にあたって、各種毒性検査していますが、言い訳はだめです。万が一、フグ毒による食中毒が起きてしまったらどうするか? これが看護とのコラボレーションになるかもしれませんが、現在この対策として、試食会を昼間行っています。万が一に対して安全管理のために、 二箇所の救急病院と連携しております。そういう意味での体制が看護とのコラボレーションではないかと思います。

大貫

医療情報とのコラボレーションとして、フグ肝に生産から出荷までの情報や毒性にかかわる情報をICタグにいれて、システム化することです。

野口

実現すると、何かが起こった場合に、原因はどこにあるか?どこの産地のもので、それはオスなのかメスなのか?個体がいつの時期に出荷されたのか? などのトレーサビリティの機能ができるのではないでしょうか。

——無毒化したフグを、普通の天然フグと見分けられますか?

野口

現在では、養殖技術が進んで、見分けがつかなくなっています。 従来は、尾鰭をみて判断していました。というのも、無毒化したものは、毒が無いので咬み合いをします。毒にはフグに対して鎮静作用があり、毒がないとストレスを解消できません。 ところが、天然のものはそれに比べ、毒を保有していることもあり、また、自由に泳いでいるため、咬み合いはしません。 しかし、最近は養殖技術が進んでいて、養殖中に、ストレスを軽減させるために電気を消して音楽を聞かせたりして養殖をしており、咬み合いがほとんど認められません。 昔は、養殖ものでは尾鰭や背鰭の咬み合いがよくあって、きれいな完全なフグがいませんでした。

——見た目では?

野口

天然ものは流線型、そのぐらいですかね。

大貫

養殖のほうが、栄養価の高い餌を食べているため、脂がのっています。

野口

社会的に今、この無毒フグが色々注目されています。著名な自然科学雑誌、イギリスのNATUREがこの無毒フグに非常に興味を持って紹介してくれました。 ニューヨークタイムズ、ヘラルドトリブビュンが無毒フグに関する記事を新聞に掲載して世界に発信し、その結果、オランダ、ドイツのテレビ各社が大学に取材にきて、 放映し、世界に無毒フグが生産できることを紹介してくれました。

オランダのテレビ番組からの取材
オランダのテレビ番組からの取材

——では、世界でどんどん養殖が進んでいくのでは?

野口

無毒フグができることは我々のデータでまったく問題が無く、完全なものです。無毒フグが普及するかしないかは努力次第です。 これからやるプロジェクトは、海水に近い塩分を入れた人工海水でフグを養殖することです。 問題点は生産されるフグがはたしておいしいかどうかです。また、費用の問題などがあります。

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